2011年3月02日(水) | by 管理人 大学と地域で学びのコミュニティを形成―京北プロジェクト― はコメントを受け付けていません

大学を交流・流通拠点に

京北の藁つと納豆プロジェクトがいっそう興味深いのは、こうした地域のなかに入り込んでの活動に加えて、大学という場そのものも交流・流通の拠点にしようとする試みがなされていることだ。それが、立命館大学にて行われる、「京北納豆フェスタ」。

納豆食このフェスタは、7月10日のいわゆる「納豆の日」に、京都市内の金閣寺そばの衣笠キャンパスにて開催される。フェスタでは、京北地域および京北プロジェクトを学内外に発信する機会として、様々な企画がなされている。キャンパス内にはテントが設置され、産直市場が開催される。そこでは、京北プロジェクトの活動やNPO法人の活動がパネルなどで啓発PRされるとともに、京北地域のミズナやカブラなどの農産物や京北の伝統食の「納豆もち」などの加工品、さらには、納豆製造に協力している市内企業の納豆製品などが試食販売される。

また、キャンパス内の大学生協の3食堂では、納豆を使った麺類や丼物が提供され、好評を博した。購買部では、「納豆もち」や「納豆あられ」といった京北の加工品・特産品の売り場も設けられている。フェスタをはさんで前後2週間ほど実施されたこれら企画は、大学を地場産品の流通の拠点とする試みといえる。

大学と地域の関係のあり方

京北納豆フェスタのねらいは、大学という場を、都市農山村交流の多角的な拠点にすることにあったといってよい。

フェスタすなわち、大学側が京北という農山村に出向くだけでなく、京北地域と京北プロジェクトについての情報発信や、多様な人や組織をつなぐ場として、大学を活用するということである。都市部にキャンパスがあるという立地を生かしたイベントを通じて、大学(産業社会学部、他学部)、大学生協(購買と食堂)、そして、大学近隣の都市住民、他地域の住民のつながりを創出しようと試みるものだ。

大学側がこうした「場」を提供することは、農産品の流通・販売ルートに悩む地域にとって、アンテナショップ的な役割を果たすことになる。加えて、京北での地域学習に携わらないその他多くの学生へのメッセージ媒体としても、大いに役立っているものと思われる。

地域の再生にとって、マーケティングが果たす役割は大きい。産学連携という場合、えてして生産現場における体験活動に重点がおかれがちだが、いま一度、マーケティング支援という視点から、大学が持つ役割を考え直してもいい。藁つと納豆伝承プロジェクトは、そういう点で、大きなヒントを与えてくれているのではないだろうか。

今、地域と大学の連携への注目が高まっている。そうした中において京北プロジェクトは、大学の学部とNPO法人とが包括連携協定を結んで地域活性化に取り組むという、プラットフォーム形態の点においても、また大学を、農山村と都市との間の人的交流拠点としてだけではなく、経済産業的な面での交流拠点とする点においても、ユニークな地域活性化プログラムといえる。

今後は、このプラットフォームを活かして、大学内外の多様な主体が連携するように促進し、さらに持続可能な地域づくりへの取組みに発展していくことが期待されている。

 

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