2011年3月03日(木) | by 管理人 メディア・イベントの先にあるもの―特定非営利活動法人情報社会生活研究所― はコメントを受け付けていません。

日常を伝えること

こうしたアプローチは、小橋さんらが最初に取り組んだ地域おこし活動でもある、ウェブサイト『田舎TV』にも共通していた。田舎TVは、今でいえばブログのはしりで、地域の人たち自身が、田舎の様子を伝えるレポーターとして活躍、身のまわりの風景をレポートするホームページだ。

田舎TVこのホームページの姿勢をよく現しているのが、イベントや名所の紹介は禁止という運営ルール。田舎の人は、他人に何か伝えようとすると、つい観光番組的な目線で地元を評価しがちになる。それを防ぐためのルールだという。その結果、ツバメが巣をつくった、畑を耕していて虫が出てきたなど、田舎の日常が、レポートには並んだ。

なかには、「草むらカメラ」という、インターネットカメラを利用した生中継も行われていた。こちらは、名前のとおり、土手に据えたカメラから、草むらの様子を映しているだけのサービスだ。役に立ちようもないけれど、これこそ、自分たちが子どもの頃に見た風景だと、小橋さんは言う。草むらのなかを転がりながら遊んだ、子ども時代の経験。それと同じ目線の悦びを、利用者にも感じてもらうことを狙ったものだ。それを通して、少しでも田舎へのふるさと意識を養ってもらうことにつながればと、小橋さんは願っている。

ゴールは地域活性化か?

里山ウォークデイにしろ、田舎TVにしろ、当団体の活動は、常識から少しずらした「とんがり」を重視してきた。ここ数年、メディアで取り上げられる機会が増えた、田舎体験を自動販売機で売る「はたけスーパー」もそうだ。予算の少ない中で新鮮な驚きを生み、話題につながる方向を目指す。小規模ゆえのニッチな戦略である。

もうひとつ、気をつけていることがあると小橋さんは言う。それは、「何を伝えるか」ではなく、「相手をどう変えたいか」を重視しているということだ。

たとえば田舎TVの狙いは、地域情報の発信ではなく、都市部の方にふるさと感を持ち、田舎への愛情を育んでもらうことである。「誤解を恐れずに言うなら、ぼくたちは地域活性化を目指しているわけではないとも言える」と小橋さんは続けた。そうではなく、日本社会全体が田舎の価値に気づき、多様な情報を大切にし、一極集中ではなく多極分散型の、主体性のある生活を送るようになることを、目指しているのだと。

法人化にあたって、現団体名を選択した理由につながる、小橋さんの思いだ。

新しい挑戦

いま、ブログや動画投稿サイトが流行するなど、個人の表現に基づく『田舎TV』的なサイトが増えた。『田舎TV』はいま、ほぼ閉鎖状態となっている。「里山ウォークデイ」もまた、6年目を終えた2008年に、開催を終了した。

「けっきょく、メディアイベントなんです」

と小橋さんは自己分析している。メディアイベントというのは、社会学的な概念だが、メディアに注目をあびるためにあえて作り出しているイベントとでもいった意味だ。「話題を集め、注目されるきっかけにすぎない」

話題にはなっても、それがほんとうに地域のためになっているのかどうか。地域活性化につながるのか。ずっと悩んできたという。

「こんなものにも価値はあるよと伝える役にはたったと思います」

しかし、たとえば経済的に地域が潤うか、定住人口の増加につながるか、と考えると、自分たちはまだまだなのではないか、という思いがあった。ほんとうに「効く」何かを追求しなくてはならない、と小橋さんは考えている。

その答えが見つかったわけではない。しかし、田舎TV、里山ウォークデイと続けて地域の人たちとのネットワークを広げてきた小橋さんのもとには、いま、多くの相談が入っており、人の輪ができつつある。

農業の振興、里山の再生、経営者養成、医療再生、恐竜関連の地域活性化、定住促進など、今、情報社会生活研究所が関連している活動テーマはほんとうにバラエティに富んでいる。

「こうした前向きな人たちの融合を図りたい」

と小橋さんは言う。その先に、それらを統合した地域の魅力を作り出したいと考えている。

 

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