2011年3月03日(木) | by 管理人 コメントする

農業の六次産業化が言われてひさしい。農産物の生産としての一次産業、加工品として売り出す二次産業、体験農園などサービス業的な分野に乗り出す三次産業、これら三つの側面を足して(あるいは掛け合わせて)、農業を活性化しようというのが「六次」という視点だ。

一方で、農村には農業の活性化にとどまらない課題があるのも事実である。いわゆる経済的な視点からみた農業だけではなく、文化的な視点から農村を守り、時代に継ぐことができるかどうか。限界集落という言葉さえ一般的になった。過疎化が進み、農村の環境を守る担い手が減る中で、多くの集落で抱えている課題だろう。

こうした視点から、いま注目されている集落がある。兵庫県朝来市山東町のよふどである。今年度から小学校が統合され、地域から無くなるという、少子化が進む地域にあって、住民が自治を高め、自ら集落を経営する努力をすることで、地域の元気が芽生えている。

自治協議会の設立と組織

兵庫県朝来市山東町与布土。人口約1500人、世帯数500という、小さな農村地域である。平成19年3月末時点で、高齢化率は約35%、10集落で構成されるが、うちひとつは、65歳以上の人口が50%を超えると定義される「限界集落」となっている。取材をした平成23年の3月末をもって、ついに小学校も統合され、地域からなくなってしまう予定である。

そんな地域の現状に、なんらかの対策を打たなければならないのではないか。そのための核となる、自治協議会を設立しよう。そんな機運が芽生え、平成19年1月、地域住民を募り、ワークショップが行われた。3ヶ月かけて行われたワークショップでは、地域住民それぞれが地域への思い、何を大切にしたいかといった自分の気持ちを語り、意識の共有を図った。こうして、自分たちの手で自分たちのまちを作ろうとする思いが共有され、与布土地域自治協議会の設立に至ったのである。

伴って発表された「与布土地域まちづくり計画」では、一人ひとりが参加する郷づくりを目標に、「自然の魅力あふれる」「誰もが訪れてみたくなる」「安全で安心して暮らせる」「ふるさとの誇りを育む」「美しい農業集落と豊かな食文化をあわせもつ」という個別目標が設定された。そして、それぞれの目標に応じて、具体的に実施する計画の目標が立てられたのである。

与布土地域自治協議会では、協議会そのものの運営を行う運営委員会のほかに、6つの事業部会を設置して、まちづくり活動を展開している。それぞれの部会には、まちづくり目標に応じたユニークな名前がつけられている。活動図

  • かえるの郷部会
    自然を学び、つなぐ活動。
  • ごくらくの郷部会
    観光資源である、よふど温泉を地域で盛り上げる活動。
  • みのりの郷部会
    集落営農などを研究し、農地環境の保全や特産品の開発、農産物の販売を行う。
  • はぐくみの郷部会
    地域の子育て支援と、伝統文化・郷土歴史の継承。
  • すみやすい郷部会
    子どもや高齢者が安心して暮らせるまちにするための取り組み。
  • つながりの郷部会
    地域住民の交流イベントや勉強会などを実施。

これに加えて、「よふど百姓村」を設置しているのが、与布土地域の特長だ。よふど百姓村は、地産地消や都市農村交流活動の中心になる組織で、自治協議会のプロジェクトチームとして、平成20年に発足した。「百笑茶屋 喜古里」の運営などが活動の中心で、「みのりの郷」部会と並び、与布土まちづくりの象徴的な存在とも言える。

百笑茶屋 喜古里

喜古利百笑茶屋喜古里は、地産地消や都市農村交流の拠点施設として、農林水産省の農山漁村地域力発掘支援モデル事業の助成を受け、平成21年5月に、古民家を改修してオープンした施設だ。地元の主婦ら8名がローテーションを組んで運営し、地域の食材を使った食事を提供している。営業時間は午前10時~午後4時(冬季は短縮)、通常は火曜日を定休とした営業だが、1月から3月までは週末のみの営業となっている。

自然薯を利用したとろろごはんや、山菜の天ぷらをつけたそばなど、地方色あふれる料理は好評で、開店以来、多くの話題を集めた。開店初年度はおよそ5000人が来店し、売上は600万円。土曜日曜ともなれば、20人から30人のお客様でてんてこまいといった忙しさだった。

しかし、開店から1年が経過して、徐々に運営側に疲れも見えてきた。ほぼボランティア的な体制での運営のため、気持ちが疲れると営業の継続が難しい。営業も、自分たちが家で出しているものを提供し無理のない範囲で、というつもりだったが、忙しさもあって、負担感が高まってきた。そうなると、収益事業としてやっているのか、地域活性化のためのボランティアなのかという境界が見えづらくなってきた。そこで、話しあった結果、当初の形での営業はいったん休業して、新しい体制を考えて運営しようということになった。

平成22年2月、しばらく休業していた喜古里を舞台に、地元ゆかりの作家の木彫り展が期間限定で開かれた。第二期の喜古里が、手探りのなか、発信しようとしている。

ふるさと小包便

よふど百笑村が開発した、もうひとつのユニークな商材を紹介しよう。「ふるさと小包便」である。

これは、与布土地域の農産物などを中心に、お歳暮用の詰め合わせを作り、地元の人に、ビールなどを送るのではなく、地元商材を送りましょうと呼びかけた取り組みである。

たとえば2008年のお歳暮用には、2,800円で次のようなものが詰めあわされているセットが開発された。「アイガモ米」「黒大豆」「緑風味噌」「まるもち」「野菜ジャム」「よふど温泉湯上りタオル」。いずれも、地域色豊かな、安心食材ばかり。加えて詰め合わせには、それぞれの生産者を紹介するリーフレットを同封し、申込に応じて郵送する仕掛けである。

生産数量は300個限定。もっとも、いざ売り出してみると、思ったほどに注文が入らない。価格設定として、お歳暮用には安く、かといって年末の来客に手土産に持たせるには高い。そのあたりの戦略ミスが指摘された。また、中身としても、もちは喜ばれるが、黒豆の場合、調理方法を知らない送り先もいる可能性があり、反省が残る。

今後、同様の商品セットを作るのであれば、たとえば道の駅のお土産コーナーでも販売できるような、1000円程度のものがビジネス的にはいいのではないかという声もあった。

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