NPO法人北近畿みらい設立にあたり、当法人が目指す北近畿のプラットフォームになることに関連して、国土交通省近畿運輸局企画観光部長の平嶋隆司様から記念講演をいただきました。その要旨を採録します。
宿泊を伴う観光の経済効果
これからの我が国は人口減少していきます。将来的には高齢化率も40%を超える予測のなかで、注目するのは、着地型、宿泊型観光の可能性です。日本人旅行者の場合、宿泊する国内旅行なら1人1回あたり5万円を消費し、日帰り客なら1回1.6万円を消費します。宿泊してもらうということの大きさを感じていただけると思います。
広域連携による魅力のトータル発信を
旅行形態も変化する時代にあります。団体旅行の比率がどんどん減少し、友人との旅、1人旅も増えています。多様化する旅の時代に魅力をPRしていく仕方も変わる必要があります。
1つの地域だけで魅力をアピールしていくのはなかなか困難になってきています。行ってみたいと思わせるには多様な魅力を提供していく必要があります。1地域だけでなく、地域が連携して取り組んでいくことが大事になってきているのです。「観光圏」という形でまとめ、ひろがりをもったエリアで取り組みをおこなっていくことが大事になってきたのです。
昨年度までに認定された45地域の観光圏があります。なかには県をまたぐものもあります。近畿のなかには現在、以下の4つの観光圏があります。京都府丹後観光圏~ゆるり ぐるり ほっこり 丹後~)」と「びわ湖・近江路観光圏~“三方よし”のふる里 びわ湖・近江路 水よし・里よし・人情よし~」、「兵庫県淡路観光圏(神話のふるさと淡路島を舞台にした御食国体験)」、そして、「聖地熊野を核とした癒しと蘇りの観光圏」が認定されています。
プラットフォーム化の意義
地域資源を活用した着地型旅行商品の販売を推進するためには、ワンストップ窓口となる「観光地域づくりプラットフォーム」が必要です。従来でしたら個々の関係者(宿泊施設、商工業者、農業関係者等)が個別に情報発信し、商品の販売をおこなっていました。旅行会社が旅行商品をアレンジし、各地域に団体客を地域に送り込んでいました。各地域の方も個別に旅行会社に交渉に行っていました。
でもそれではなかなか全部を叶えてもらえません。また商品としても安定性がなく、365日、それだけの人を継続して引き受けられるかという課題もあり、また何かあったとききちんと処理できるかどうか不安もありました。個々人が個別に旅行会社にPRに行ってもなかなかそれが届きにくかったのです。旅行会社に情報がいかないものは観光客、エンドユーザーにも情報が入っていかない、届かないという図式でした。
プラットフォームというのは、旅行会社の手前に地域側に1つワンストップサービスができるような一元的な窓口をつくっていこうということです。窓口をつくって観光に関するコーディネーターがいて、すべてのことを処理できるような形になるということです。そうなると、いままでは旅行会社がパンフレットをつくってくれなかったら全国に知らせられなかったものが、広域的な地域について広報ができ、集客が可能になるのです。旅行会社にとっても、安心感があります。
プラットフォームの中身としては旅行業、まちづくりNPO、自治体、観光協会、商工会議所、大学、農協といったところが加わり、観光の素材をまとめていけばと思います。バラバラではなくてトータルとしてどんなものが提供できてどの程度キャパシティがあるのか地域として一体となって発信できるようになります。
プラットフォームの先進例
観光地域プラットフォームの先進事例として、3つご紹介します。
千葉県南房総市の「(株)とみうら」は、もともとは道の駅としてスタートしたところです。それが機能拡大し、休憩・防災拠点・地域連携・情報発信と、機能拡大した例です。
長野県飯田市の「(株)南信州観光公社」は飯田市を中心とした5市町と10企業・団体の出資により設立されたもので、体験観光の一元的窓口をおこなっています。
大分県別府市の「NPO法人ハットウ・オンパク」は、温泉を活用した体験型プログラムを、知恵を出し合い、お金をかけないで創造するタイプで優れた例といえます。
近畿のプラットフォームの事例でいいますと、和歌山の熊野の事例があります。「一般社団法人田辺市熊野ツーリズムビューロー」では、関係者を巻き込み体制をつくり、資源をまとめ、熊野古道という世界遺産を活かし、外国へのアピールも積極的に行っています。
地域のなかで人が集まり、リーダーが全体をコーディネートし、知恵を出し合って新しいものを提案していきます。地域が全体としてまとまることで周囲と差別化をしていく、競争力をつけていくというのがキーだと思います。なかなか時間がかかることでもあり、こつこつと積み上げていくものだと思います。全体してまとまっていくと強い交渉力が期待できるのです。広域連携の時代、プラットフォーム化の時代にあって、ここに誕生した北近畿みらいの取り組みはとても大事で大きな期待をしています。